2016年09月25日

ガンを治す、人生を癒す

ウェラー・ザン・ウェルへの道 第一回「ガンを治す、人生を癒す」
               川竹 文夫( NPO法人ガンの患者学研究所代表)

ガンを契機に、真に価値ある人生を創造する・・・ウェラー・ザン・ウェル患者学の確立を目指す大型連載。
〜月刊『いのちの田圃』創刊号より〜


 ガンは治る。再発を繰り返した進行ガンも、医師から見放されてしまった末期ガンも、やはり、治る。
 これは、私の信念であり、多くの実例が、それを決して揺るがぬ強固なものに鍛え上げてくれた。
 余命一年や半年は、当然。三ヶ月も驚くにはあたらない。中には一週間と言われながら、見事に生還をはたした人もいる。
 一晩に二度の意識不明を乗り越えた人、一時間半の心臓停止からよみがえった人もいれば、三時間もの停止をものともせず、医師たちの驚きを尻目に、笑顔の日々を送っている人もいる。
 しかし、きわめて残念なことだが、相当数の患者さんが、そのような例は、しょせん自分たちには無縁の『奇跡』だと、まともに取りあおうとしない。
 それどころか、自らの治療が順調に進んでいない人たちの中には、次のように言う人もいる。
 「頑張っているのに、私はどうしても治らない。ガンがそんなに簡単に治るとは思えない」と。
 だが私は、それでもなお断言する。
 治るには治るだけの理由がある。治らないのにも、それだけの理由があるのだと。
 末期から生還した人たちは、ただ幸運であったわけではない。一度は砕け散ってしまった希望を拾い集め、あくまでも生き抜く道を探し求めた。
 食事を改め、生活習慣を整え、怒りや恨みを捨て、自分を許し、人を愛し、空が青いというただそれだけのことにも喜びを見いだし・・・あるいはまた、身体にやさしい治療を選びとり・・・そうした努力の積み重ねが、最大の果実を手繰り寄せたのである。
 回復が思うに任せない、あなた。さまざまな努力にもかかわらず、悪化の一途をたどっている、あなた。 もう一度希望と勇気を取り戻し、どこかに不十分な点はなかったかを根本的に問い直してみてほしい。
 そして、気づいたことが一つでもあれば、それを確実に実行してみよう。今すぐ、そして粘り強く。
 そうすれば、間違いなく、今度はあなたが治る番である。
 諦めるのは簡単。もう沢山だとすねる気持ちも痛いほど分かる。けれど本当に、それでいいのか。私はそう問い掛けずにいられない。
 何故なら、ガンは『治るもの』だからだ。そして、最悪に見えた時こそ、実は、回復への折り返し点の一歩手前に来ていることが多いからである。
 私はまさに、そんなあなた方にあてて、この記事を書き続けるつもりでいる。

 ところで、この連載は、ガンをただ治すことだけを、最終目的にはしていない。治すことはもちろんのこと、ガンになったことを契機に、これまで以上に価値ある人生の創造を目指しているのである。
 それは、次の言葉に、見事に表現されている。
 ウェラー・ザン・ウェル(Weller Than Well)。
 ガンから真に回復した人は、病を得る以前にも増して、心身共に、健康で幸せな人生を送ることが出来るという意味である。
 ほとんどの人にとって、ガン発病は人生最悪の出来事である。
 だが、ウェラー・ザン・ウェルという言葉は、それが大きな恵みに変わり得ることを晴れ晴れと宣言しているのだ。

 一九九〇年、腎臓ガンを発病した私は、一つのテレビ番組を制作した(NHK教育テレビスペシャル『人間はなぜ治るのか』)。
 そこに登場した人たちのほとんどが、再発を経験し、あるいは余命宣告を受け、医師から完全に見放されるという絶望的な危機をくぐり抜けていた。
 その彼らに、例外なく共通していることが、二つある。
 ガンになる以前よりもずっと肉体的に健康であること。そして、心に満ち足りた幸せを確かめつつ、日々を過ごしていることである。
 そして・・・穏やかな笑顔で、彼らは語る。
 「ガンは、私の宝物」「ガンになったおかげで、人生はバラ色」「ガンになってからの自分の方が、ずっと好き」
 そこには、ウェラー・ザン・ウェルの見事な証明があった。以来、私は幾度、この美しい言葉を心に刻み、口に唱えてきたことだろう。
 そして、今、切に思う。
 完全治癒の頂上を目指して登るすべての患者さんと、この言葉を共有し、遠からぬ日必ず、その実現の喜びを分かち合いたいと。

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 上の図は、そんな願いを込めて、今回初めて、まとめたものである。
 全体は五つの段階に分かれている。個々の詳しい説明は、次号以降にゆずるが、今号では、すぐにでも役立つよう、各段階の概略だけでも述べておく。月に一度の本誌を待てない事情の方も少なくないだろうと案ずるからである。

@ パニックの段階

 にわかに命の危機を突き付けられて、時間が切迫しているという強迫観念にとらわれ、大混乱の渦の中でもがくばかりの段階である。
 刻一刻とガンが大きくなっているかのような恐怖を抱えているため、冷静な判断が困難になっている。
 この時点で最も大切なことは、ガンの暗く絶望的なイメージを、いかにして振り払うかであり、そのためには、正しい知識と、希望につながる情報をしっかり身につけねばならない。
 最新の医学・精神神経免疫学は、言う。不安、恐怖、悲しみ、怒りは免疫を下げ、希望、闘志、喜びなどが、免疫を上げて、ガンを消失にさえ導くという。
 治った人の話、希望の持てる情報をシャワーのように浴びること。間違っても、ホスピス関係の本などを読んではいけない。暗い話をする隣人も近付けてはならない。

 ◆この段階でなすべきこと

 ・必ず治して見せると決意する。
 ・ガンは、急に大きくなったりしないという明白な事実を知る。
 ・希望を持つ。そのためには、治った例を一人でも多く知る。
 ・勉強、勉強、また勉強。ガンとはどういう病気か、どんな治療があるのか・・・。ここで手抜きをすると、不要な手術や過剰な治療を受ける可能性が高くなる。
 ・暗い本は読まない。いかに科的な装いをこらしていようと、あるいは感動的に見えようと、患者が死ぬ本は絶対読まない。 
 ・不利なデータにとらわれない。   
 ・余命宣告はデタラメ。即座に蹴飛ばしてしまう。
 ・閉じこもらない。騒げば情報も集まってくる。
 ・ともかく落ち着く。


 A 応急処置の段階

 大多数の患者さんは、手術、放射線、抗ガン剤など、いわゆる三大療法を受ける。
 しかし、この治療は、ガンの固まりという結果を取ってしまうだけ。つまり、目に見える『現象』の世界にしか、関心が向いていない。ニキビをつぶすのに似ていて、あくまでも緊急非難、応急処置にすぎない。
 また、再発を繰り返している場合や末期の場合、どこまで治療を受けるかが運命を決める。
 このような場合、抗ガン剤はほとんど無効。手術も、絶対的な適応(さまざまな狭窄がある場合)以外は、よほど慎重にすること。
 医者たちがひそかに認めているように、多くの患者は、ガンよりも、抗ガン剤などの治療によって、命を縮めているのだ。

◆この段階でなすべきこと

 ・治療は必要最低限にし、過剰な治療は極力避ける。
 ・医者任せにせず、自分が受けている治療の、身体への負担と効果を常に把握する。特に、抗ガン剤については、甘く考えていると副作用で命取りになるので治療の止め時を意識しておく。
 ・抗ガン剤は、再発ガンにはほとんど効かない。
 ・代替(だいたい)療法を勉強する。
 ・玄米菜食を始める。これで治ることもある。少なくとも、副作用が軽減されることが多い。
 ・健康食品をとる。前記と同じ理由による。
 ・三大療法でうまくいかなくとも、悲観するには及ばない。治る方法はいくらでもある。また、手遅れで手術や抗ガン剤が出来ない場合、むしろ幸運と思うべし。身体にやさしい代替療法を試すチャンスである。

 B 根本治療の段階

 三大療法による治療が一応終わると、待ちに待った退院である。が、実は、ここからが本当の勝負。
 ガンによる死亡者数は、増加の一途。何故か。『結果』にしか眼を向けない現代ガン医療には、再発や転移を防げないからである。
 とすれば、患者自身が自分でやるしかないだろう。それが、『原因』を取り除く根本治療である。
 ストレスを和らげ、肉食中心の食事
を玄米菜食へと一大転換をする。 そして、適度な運動と休息を取り入れた穏やかなライフスタイルに改めること。
 精神神経免疫学の指摘するとおり、心を徹底的に見つめる作業は不可欠である。

 ◆この段階でなすべきこと

 ・ガン発病の原因を徹底的に洗い出す。
 ・ガンはなくなっても、ガン体質はそのままになっている。『ガンの原因と結果』の図を参考にして、三つの原因を一つ一つ、根気強く改めていく。ここをおざなりにしていては、いつ再発しても不思議はない。
 ・ガンは生活習慣病。誤った生活習慣がもとで自分で作ったもの。自分で作ったガンは自分で治す覚悟が必要。
 ・三大療法によるダメージで、体力も免疫力も落ちている。それを持ち上げるためにも、上記のことは絶対に欠かせない。
 ・発ガン環境に戻らない。同じ原因は、必然的に同じ結果を招く。仕事への取り組みを見直すことも重要である。


C メッセージ解読

 ガン発病の意味を解読する仕上げの段階。


 ◆この段階でなすべきこと

 ・人生の棚卸しをするつもりで、これまでの歩みを振り返る。
 ・未解決なまま引きずっている、人生上の難問を解決する。
 ・自分の人生にとって、本当に必要なものの優先順位を付ける。
 ・これまで、したくても出来なかったことを、実行に移していく。
 ・新しい生き甲斐を見いだす。
 ・今まで気づかないでいた、自分の新しい可能性を探る。
 ・人生の新しい価値に目覚める。
 ・ガンに感謝する。 

 ガンはその人にとって必要があって出てきたもの。「ガンからの手紙」、あるいは「ガンからの呼び掛け」である。
 そうとでもしなければ、あなたに存在すら気づいてもらえなかった本当に大切なこと・・・ガンは、それを教えてくれたはずである。
 そのすべてのメッセージを解き終えたとき、『新しい出発の扉』は開き、そこには、ウェラー・ザン・ウェルの世界が実現しているに違いない。


 あなたは今、初期のガンが見つかり、青ざめているのだろうか。それとも、再発や転移の兆候に怯えていはしないか。あるいは、いきなり末期に至り、心ない医者の余命宣告で、絶望に沈んでいるかもしれない。
 すでにウェラー・ザン・ウェルへの間近にまで至ってなお、道のりの意外な困難さに、独り悩んでいる人もいるだろう。
 ご家族の命を支えようと、我が事以上に気を病んでいる人は、さらに多いに違いない。
 いずれにしても、あなたさえその気なら、私はいつ何どき何度でも、この図を携え、一緒に頂上目指して歩きたいと願っている。
 それが、少しは先を歩く、私の役目だと信ずるからである。


川竹文夫・プロフィール
 元NHKディレクター。1990年、腎臓ガン発病をきっかけに、ガンの自然治癒の調査研究を開始。92年、NHKスペシャル「人間はなぜ治るのか」を制作。絶望から生還した人たちの力強く生き抜く姿は大きな感動を呼び、今も各地で上映会が繰り返されている。94年、「幸せはガンがくれた・心が治した12人の記録」出版(創元社)全国各地の病院の必読本となる。95年、ガンの患者学研究所設立。


posted by NPO法人 ガンの患者学研究所 ガン患研 at 07:21| 月刊『いのちの田圃(たんぼ)』