【「十万人に一人」の計算】


泉 建治さん
猛烈営業マンだった泉さんは、
2002年4月、膀胱ガンX期。
その後大腸にも転移。
手術をしないと半年の命と言われる。
人工膀胱、人工肛門になる手術を断り、
懸命な自助努力を開始し、約1年後に
見事に自助(自然)退縮。
柳澤 泉さんは、〈治ったさん〉になられてから、数々の新しいことに挑戦され、今は、念願だった添乗員のお仕事を満喫されています。さて、泉さんと言うと、石段の手の形が有名。それぐらい腕立て伏せをしたことが伝説になっているほど。なぜ、そこまで腕立て伏せをするようになったのでしょう。まず、『幸せはガンがくれた』との出会いからお話しください。
泉 私の入院中に妻が図書館で見つけてきました。何回も読んだのですが、とりわけ25ページの2行に感銘を受けて、それだけを考えて自分の心を変えていきました。
柳澤 たった2行ですよね。
泉 2行しか読まなかったわけじゃないんですよ。(会場笑)
小林 いっぱい読んでる(笑)。
泉 「ときとして自然に治ってしまうんですね。そのころは十万人か二十万人に1人と言われていた……」
この十万人に一人とはどういう数字なんだろうといろいろ考えました。まず、一人ということはゼロじゃない。可能性があるということですよね。それから、十万人といってもほとんどの人が手術をしています。
入院していた大学病院では、私と同じ膀胱ガンで、手術を断って退院した人がいるという噂を聞いたことがある。そうすると、手術をしないのは1名かな。いや、3名ほどいても勝ち目がある。なぜなら、その3人のなかで、自分のように、治そうとして玄米菜食や勉強している人がいないだろう。私なら、その1人になれる。つまり、十万人に1人になれる…。
柳澤 すごい! そのように計算されたのですね。
泉 そう考えついて、退院しようと思ったんですが、悩みましたね。妻には手術をして人工膀胱になったら、半年しか持たないよと言われました。選択肢は2つだけ。手術するか、しないか…。そんなとき手術が偶然2回延びて、これは手術するなということ、これしかないと思いました。
じゃどうやって断るか、手術まで後2週間のとき、考えに考えに考えて、答を出しました。
柳澤 どうされたんですか。
泉 手術の説明の日、まずは先生の話を40分ぐらい聞きました。はいはいはいと聞いて、「ところで先生、今日退院したいんですけど」って切り出しました。
「えっ、何言うんですか、手術をしないと半年持たないですよ」と言う先生に「自分としては覚悟ができています。余命の半年を、身体に傷をつけないで迎えたいと思いますので」。それ以上先生は何も言われなかった。時間が長引くといろいろ説得されるかもしれないので、さっさと終わり、すぐに家に帰りました。
(拍手)
次の日起きた時は、夢なのか現実なのかしばらく分からなかった。家のベッドだと気づいて、ああ、昨日言ったことは夢じゃなかったんだと思いましたね。
小林・柳澤 すごい! 勇気のいる決断です。
泉 断ったのはいいけど、それじゃ、なにをしたらいいか分からない。ちょうど半年後に岡山で長女が結婚式をあげることになっていて、車椅子ででも行けるかなと思っていたんですけど、そうだ、歩いていくためには体力をつけなくちゃって。
柳澤 それで、腕立て伏せ?
泉 そうです。朝5時に起きてウォーキングと腕立て伏せ、1万5000回。
柳澤 ほんとにすごいです。
泉 体力がついてきたら、考え方も変わってきました。『幸せはガンがくれた』をお守りにすれば、なにがあっても大丈夫だと。
小林 これがその『幸せはガンがくれた』ですね。図書館のシールが貼ってありますね。
泉 図書館には、なくしたからと言って、新しいのを買って返したんですよ。
柳澤 なあるほど!
どんな偶然も、何でも自分が治る、自分が生きるぞって方に引き寄せた、「十万人に1人」の計算は、まさに世界遺産です!
(拍手)

『いのちの田圃(たんぼ)』172号より